平成29年3月決算の税務上のポイントその2
■企業版ふるさと納税
地方公共団体が行う地方創生事業に対して寄附を行った場合に、従来からの寄附金の損金算入措置に加え、その寄附金額の一部を、支出した事業年度の法人事業税額・法人住民税法人税割額及び法人税額から控除する仕組みが設けられました。
<要件>
・青色申告書を提出している法人であること。
・地域再生法の一部を改正する法律の施行日(平成28年4月20日)から平成32年3月31日までの間に、地方公共団体が行う、地方創生を推進する一定の事業※に対して寄附金を支出したこと。
※地域再生法の認定地域再生計画に記載されたまち・ひと・しごと創生寄附活用事業が対象
<控除額の計算>
・控除額
・法人事業税 寄附金額の10%
・法人住民税 寄附金額の20%(道府県分5% / 市町村分15%)
・寄附金額の20%のうち法人住民税で控除しきれなかった分を法人税で控除(寄附金額の10%が限度)
・控除上限額
・法人事業税 法人事業税額の20%
・法人住民税 法人住民税法人税割額の20%
・法人税 法人税額の5%
なお、この制度の適用を受けるためには、確定申告書等、修正申告書又は更正請求書に控除の対象となる特定寄附金の額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細書を添付し、かつ、その明細書に記載された寄附金が特定寄附金に該当することを証する一定の書類を保存する必要があります。
この場合において、控除される金額は、その確定申告書等に添付された明細書に記載された特定寄附金の額を基礎として計算した金額に限られます。
ふるさと納税の改正について
1.特別控除限度額が2倍に拡大されました。
特別控除額の控除限度額を個人住民税所得割の2割に引き上げる。
(注)上記の改正は、平成28年度分以後の個人住民税について適用する。
何やら意味が分かりにくいですが、大雑把に言えばこれまで自身の住民税額の10%程度まで控除されていたのが、20%程度まで控除されるようになったということです。この控除の拡大は平成27年1月1日以降に寄附した分から対象になります。
2.確定申告が不要になるワンストップ特例制度が創設されました。
従来のふるさと納税の場合、節税メリットを享受するためには確定申告をしなければなりませんでしたが、以下の3つの適用条件をすべて満たしていれば確定申告が不要になります。
1) 平成27年1月1日から3月31日までにふるさと納税の寄附をしていないこと
2) 元々確定申告をする必要のない給与所得者等であること
3) ふるさと納税の寄附先が5自治体以下であること
ワンストップ特例制度の但し書きに「平成27年4月1日以後に行われる寄附について適用する」とあるため平成27年3月31日以前にふるさと納税をした場合は確定申告が必要です。
また、別の理由から確定申告をする人もワンストップ特例制度は適用されませんので確定申告が必要です。
さらに、ふるさと納税の寄附先が6つ以上になった場合も確定申告が必要です。
確定申告の場合は、所得税の控除
住民税の基本控除
住民税の特別控除
の3つを合計して税金を減らしましょうとなっていますが、確定申告が不要となるワンストップ特例制度を利用する場合は、すべて住民税から控除することになっていて、翌年度の住民税から控除されます。
但し、確定申告が不要といっても寄付金税額控除に係る申告特例申請書を寄附した自治体へ提出する必要があります。自治体によっては申込フォームに「申請書を希望する」というチェックがある場合があるようですが、そうでない場合は手続きを確認した方がいいでしょうね。
3.返戻品送付への対応についての通知
これはあまり知られていないようですが、一部の過剰ともとれる返礼品について、良識ある対応をとるように総務大臣の通知が出ています。
「・・・次に掲げるようなふるさと納税の趣旨に反するような返礼品を送付する行為を
行わないようにすること。」
1) 換金性の高いプリペイドカード等
2) 高額又は寄附額に対し返戻割合の高い返礼品
豪華な特産品で自治体間が激しい合戦を繰り広げていましたが、今は高額な返礼品は無くなっているんでしょうか?
最後にこれもご存じない方が多いと思いますが、ふるさと納税の寄附者が特産品を受けた場合の経済的利益は、一時所得に該当します。
一時所得は「総収入ーその収入を得るために支出した金額ー特別控除50万円」で計算されますが、寄附した金額は「その収入を得るために支出した金額」には該当しません。
ふるさと納税による寄附金は、あくまで寄附行為によるもので特産品等を受けるために支出するものではないことによります。
よって返礼品の合計が50万円以上の価値となれば一時所得が発生することになりますし、その他に一時所得があればもっと少ない返礼品であっても課税ということになりますので参考までに。
記 H27.4.30
「ふるさと納税」について
最近、新聞やテレビ等で取上げられている「ふるさと納税」と言う言葉を皆様 も一度は聞かれた事があると思います。
言葉を聞いて、生まれ育ったふるさとに納税する制度として受け止めておられ る方も多いのではないかと思います。
上記の考え方は「ふるさと納税」の趣旨とは若干異なりますので概要を書かせ て頂きます。
まず「ふるさと」とは自分の出身地だけではなく、将来住みたい地域、学生時 代にお世話になった地域、その地域の特産品が好きなので応援したい等、各人 が自由に地域を選択し納税する制度です。
次に「納税」となっていますが、選択した自治体に税金を支払うのではなく寄 付を行い、その自治体は寄付されたお金を使い地域の活性化に繋げていく仕組 みになっています。選択できる自治体は1カ所だけではなく、複数選択し寄付 する事も可能です。
また自治体に寄付をすると、その自治体の特産品等が謝礼として頂けます。 簡単にまとめると、各人が思い入れのある地方自治体に寄付をし、寄付金控除 を受けられるという制度で、「ふるさと寄付金」とも呼ばれています。
「ふるさと納税」を行った場合は確定申告をしなければ寄付金控除を受ける事 が出来ないので注意が必要です。
【所得税・復興特別所得税】
A所得税:(寄付金額-2000円)×所得税率(所得により変動。0~40%)
B復興特別所得税:Aの金額×復興特別所得税率2.1%
【個人住民税】
A基本分:(寄付金額-2000円)×10%
B特例分:(寄付金額-2000円)×[90%-(所得税率×1.021)]
A+Bの合計額
【例】
4人家族(夫婦2人、子供2人)
給与収入700万円、所得税率20%、住民税所得割額338500円
寄付金額:5万円
【所得税】
所得税:(50000円-2000円)×20%=9600円
復興特別所得税:9600円×2.1%=200円
【住民税】
A:(50000円-2000円)×10%=4800円
B:(50000円-2000円)×[90%-(20%×1.021)]=33400円
A+B=38200円
所得税:9600円、復興特別所得税:200円、住民税:38200円 合計で48000円の税額が軽減されることになります。
上記はあくまで一例です。各ご家庭の年収、家族構成、その他の控除金額等に よって控除額が変わってきます。
次に注意点として、地方自治体から受けた特産品は地方自治体から経済的利益 を受けたという事で、所得税法では一時所得に該当する事が明らかにされてお ります。
一時所得の金額の計算では50万円の特別控除額がある為に、特産品を受けた だけでは確定申告をする必要はありません。
ただし他の一時所得がある場合、例えば生命保険契約に掛かる一時金を受け取 った場合は、課税関係が生じることになるので保険金と特産品を同時に受けた 場合は、特産品の金額も一時所得として申告する必要が出てくるので注意が必 要です。
最後に「ふるさと納税」の趣旨とは地方間格差や過疎等による税収の減少に悩 む地方自治体に対しての格差是正を推進するための新構想として、2008年 に創設された制度です。
「ふるさと納税」を行うことで、特産品が受けられることが同制度を促進させ る事になりますが、あくまで地方自治体への寄付行為であり特産品を受ける為 の制度ではない事をご理解下さい。