制限納税義務者とはどんな人?
相続税法では、財産を取得した者が「制限納税義務者」に該当すると、国内財産のみに相続税や贈与税が課税されます。
つまり財産が国外にあるものならば日本の相続税又は贈与税がかからないわけです。
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「制限納税義務者」に該当しますか?
=制限納税義務者の定義=
最初に、以下は相続税の場合でご説明しますが、贈与税も同じです。
「制限納税義務者」は、相続によって国内財産を取得した時点で、国内に住所を有していない人をいいます。
(「非居住無制限納税義務者」に該当する人を除く。)
制限というの名の通り、課税される財産が国内に所在するもののみに制限されます。
=制限納税義務者の改正の歴史=
この「制限納税義務者」についてはこれまでも何度も改正がなされてきました。
もともとは「居住無制限納税義務者」と「制限納税義務者」のいずれかしか存在せず、相続により財産を取得した時に国内に住所を有していない者は「制限納税義務者」でした。
そうなると、住所を外国に移してしまえば、簡単に税逃れができてしまうため、平成12年度の税制改正において新たに「非居住無制限納税義務者」という区分を設けました。
これは、被相続人と相続人のいずれかが過去5年以内に国内に住所を有していた場合には、その相続時点の住所が外国であったとしても無制限に課税する、つまり国内財産も国外財産も課税されることとなりました。
しかし、それでも外国籍であれば制限納税義務者となれたため資産家の親が子や孫に外国籍を取得させたうえで、国外財産を贈与してしまえば、税逃れができてしまいます。
そこで平成25年度税制改正により、相続人が外国籍であっても、その財産を取得した時点で、被相続人が日本に住所を有していれば「非居住無制限納税義務者」に該当することとしました。
これは本当にあった実例(武富士事件と中央出版事件)で、裁判で争われ、その後改正に至りました。
そして29年度改正によってさらなる改正が行われました。
・2017年6月29日 配信
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